わたしが東京平和映画祭を始めるきっかけになったのは、自分が翻訳プロデュースした『テロリストは誰?』を世に出したかったことと、ちょうどそのとき『教えられなかった戦争』シリーズの自主上映会を主催していた浅野禎信さんとの出会いがあったからでした。浅野さんと意気投合して仲間数人に声をかけて実行委員会を立ち上げ、おかげさまで毎回ほぼ満員御礼で、映画祭は成功してきました。
『テロリストは誰?』がアメリカの外交政策の本質を見事にあぶりだし、戦争を生み出す構造や根本原因に迫ってわたしの目を開かせてくれたのと同様、高岩仁監督の『教えられなかった戦争』シリーズは、日本がなぜあの戦争に向かって暴走したのか、その根本原因は何なのか、そして今も経済「戦争」が第三世界の人々を苦しめていることを教えてくれました。日本がアジアに仕掛けた戦争は、今も形を変えて続いています。
戦争で莫大な利益を得た人たちは、軍人ではありませんので罰せられることもなく、今も安泰です。そしてその特別な利益集団は今はグローバルに展開し、次の戦争を仕組んでいます。対テロ戦争が起きて、どの企業が潤っているでしょうか。軍需産業はもちろんですが、わたしたちがガソリンや灯油の値上げに困窮している一方、石油メジャーは最大の利益を上げていますね。
高岩監督の『教えられなかった戦争 第二の侵略』を上映した際には舞台でごあいさつをしていただき、監督ブースにも出展していただいて、いろいろな話しができました。終わった後も打ち上げまでつきあってくださり、その席で「ブースにもってきた作品がすべて売り切れてしまった。こんなことは初めて」「こんなにたくさんの若い人たちに観てもらえてうれしい」「日本の社会があまりにも無関心でもうやる気をなくしていたが、また映画を作る意欲がわいてきた」と話してくれ、主催者としてもとてもうれしかったです。
『教えられなかった戦争』シリーズは、日本人必見の映画です。戦争の悲惨さを描いた映画はたくさんあるのですが、それだけではどうして戦争が起こるのか、その背景、根本原因には何があるのかがわかりません。根本原因が分からない限り、効果的な対策は生まれません。『教えられなかった戦争』シリーズのどれをとっても、そして遺作のひとつとなった『戦争案内』は短編でありながら、見事にそのことを伝えています。
東京平和映画祭は今年7月18・19・20日3日間の予定で第5回目を開催しますが、高岩監督の仕事を少しでも引きついでいきたいと志を新たにしています。
高岩監督、わたしの目を開かせてくれてどうもありがとうございます。どうか光の世界からわたしたちを見守ってください。
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