昨日から富山に来ています。ご招待くださったのは、小川晃さん。元富山県議会議員で6月のビクトリアの「国際平和省会議(来年からは平和省グローバルサミットとなる)」に一緒に参加した方です。軍隊をなくした国・コスタリカのリタ・マリエ・ジョンソンさんと一緒で、彼女の講演会で短い講演(15分)と通訳を頼まれています。今日は高岡商工会館の大ホールでリタ・マリエ講演会が開かれたのですが、250名以上の参加あり、みなん熱心に聞いていました。終わっても質問が続き、コスタリカファンがまたここでも増えたのではないでしょうか。
リタさんはアメリカ人ですが、コスタリカの国連平和大学で教鞭を執ったあと、安定した給料と職を辞して自ら「ラスール財団」を設立しました。ラスールというのは、コスタリカの詩人が書いた物語にでてくる平和の偉大な師(子どもたちを導き守る神の使い)の名前です。ある日、コスタリカにやってきたラスールは山に子どもたちを集めて、1週間平和のトレーニングをします。「空の稲妻をコントロールしようと思う前に、まず自分の心の中の嵐を鎮めなさい」と教えます。
こうして子どもたちはピースメーカーに生まれ変わって両親の元に戻ります。両親は子どもたちの影響を受け、ピースメーカーになり、やがて、村全体が平和になり、豊かに、創造性に溢れた場所へと変身します。
この物語が発表されたのは1946年で、その2年後になんとコスタリカはこのラスールの物語が予言したかのように、軍隊を完全に廃止するのです。それまでコスタリカは内戦状態で、中米の中で一番貧しい国だったことが信じられません。
リタさんはこのラスールの物語に感銘を受け、財団を「ラスール財団」と命名し、夫と2人でコスタリカ平和部隊というプロジェクトを始めます。平和部隊は平和の技術を授けるトレーニングプログラムであり、コスタリカの全ての人をピースメーカーにするべく活動していますが、今は学校の先生をターゲットにしています。そして先生から子どもたちにその技術を伝えてもらっています。
平和の技術とは何でしょう?まず心に平和を感じること(これを実現する最新テクノロジーを使った道具があるのです。EM Waveというのですが、心の状態、ストレスの度合いがすぐにわかる道具です)と、平和を語ること(非暴力コミュニケーション術)の2つが柱です。平和な心のときには、思考も明晰で建設的な判断ができます。ストレスにさらされているときは、逆の結果になります。
彼女の話しをすべてここには再現しませんが、訳していて思ったのは、コスタリカの国民がいかに平和を現実のものにするために不断の努力をしているか、ということです。日本はどうでしょうか。平和憲法があるのに、どんどん戦争への道を許してこなかったでしょうか。いつの間にか日本の自衛隊は世界有数の軍隊(軍事費では2位から4位の間)になっているのは、どうしてでしょうか。
教育基本法を変えて、お国のためにいのちを投げ出す子どもを育てよう、という方向に今、日本は向かっています。コスタリカでは平和教育法があって、すべての学校、すべてのクラスで非暴力で争い(喧嘩)を解決する方法が教えられ、子どもたちは地球市民となるよう教育されているというのに。なんという違いでしょう!
憲法をもっているだけでは平和は実現しません、とリタさんははっきりいいました。毎日、毎瞬を平和の実現の選択をし続ける、そのためにアイデアを出し合い、トレーニングを受け、一人一人がピースメーカーになる努力をして初めて、平和が現実のものになっていくのです。
そして1国では平和はできない、とも。実際コスタリカは紛争を抱えた国に囲まれています。しかし、例えばニカラグアの紛争が激しかった1980年代も、アメリカからの強い圧力と、タダで強い軍隊を持てるという誘惑に負けず、軍隊を持ちませんでした(アメリカは費用は全部出すから軍隊を作れ、と迫っていたのです)。その代わり、大統領が周りの紛争国すべてに出かけていって、双方のリーダー(政府と反政府)に「戦車よりもトラクターを」「兵士の数より教師の数を増やそう」と説得し続け、ついに中米全体の争いを終わらせたのです。この功績によりノーベル平和賞を受賞したのがオスカー・アリエス大統領です。
今年の5月に彼がまた大統領に再選されました。実はこのときコスタリカでも改憲をしたのです。しかしそれは彼を再選するための憲法改正でした。ノーベル平和賞を受賞したオスカーをもう一度大統領にするために(コスタリカの憲法では大統領の再選は許されていませんでした)。日本が憲法9条を捨てようとしているのと、何と大きな違いなのでしょう!
そして、今、彼女の発案で平和省設立法案(実際には法務平和省という名前になる)が11月7日に正式に提出され、議会での審議を経た後、おそらく来年中頃には成立する可能性が高いそうです。現在世界で市民が平和省の設立に尽力している国は日本を含め24カ国ありますが、おそらくコスタリカが最初に実現しそうです(平和省運動がもっとも盛んなのは、なんとアメリカです)。
彼女の話しは私たちに平和は現実的であり、可能であること、そして戦争よりもずっと安上がりで、真の繁栄をもたらすことを教えてくれ、大いに勇気づけられました。
明日11月17日(金)は富山のボルファート富山(4階/琥珀の間)で午後6時から講演いたしますし、明々後日の11月19日(日)は前のブログにあるとおり、エデュカス東京(市ヶ谷)大ホールで、午後6時半から平和省プロジェクト国際シンポジウムが開催されます。http://ministryofpeace.jp
どうぞリタさんの生の声を聞いてください。本当に感動しますよ!このチャンスをお聞き逃しのないように。
お詫び:東京のシンポジウムに参加予定だったダイアナ・ロングボートさんは都合で来日ができなくなりましたことをお詫びします。
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