2005/08/22

選挙のこと

大阪にある「人民新聞」というミニコミ紙に、以下の原稿を書きました。新聞が出る8月25日まで、転送はできません。
=========

政治を私物化する小泉首相ー郵政民営化は選挙の争点ではない

      グローバルピースキャンペーン きくちゆみ

今回の選挙で問われているのは、郵政民営化の是非なんかでは絶対ない。最も大事なことは日本が戦後はじめて「参戦」したイラク戦争の是非であり、自衛隊のイラク駐留を続けるか否かだ。どこまでもアメリカ政府に追従し、戦争への道を開き、日本の富裕層だけの冨を増やしながら、弱者に痛みを押し付ける小泉首相の「改革」の是非こそが問われなくてはならない。

私はもちろん小泉改革に反対だ。彼のやったことで一番許しがたいのは、自衛隊のイラク派遣。長年日本が中東で築いてきた信頼を台無しにしてしまった。この責任をどうやって小泉首相はとるつもりなのか。もはや取り返しがつかないが、これ以上対日感情が悪化しないうちに、自衛隊を即刻撤退させたほうがいい。

日本がとるべき道は、軍縮を勧め、核兵器廃絶を実現させ、紛争の解決に武力行使をしないという憲法9条を世界の憲法とすべく世界に働きかける(アメリカを説得する)ことであり、防衛費を削減し、地球環境問題に積極的に取り組み、環境問題の解決のリーダーとなって世界の信頼を得ることだ。イラクでは劣化ウランの影響でガンや白血病などの病に苦しむ人々に医療支援を行い、貧困をなくすために第三世界への技術移転を行うことだ。

イラクへの自衛隊派遣は人道復興支援などではない。1日1億円も使って水を供給しているようだが、NGOに水供給をやってもらえば、はるかに効率がよく低価格で、イラクでの雇用も生むことができる。それでこそイラクの人々に役にたつ復興支援となることは、多くの人が指摘している通り。

違憲状態のまま、そして強行成立させたイラク特措法にも違反したまま(戦闘地域への自衛隊派遣は行わないことになっている)の自衛隊は、即時イラクから撤退させるべきであり、この選挙では憲法や教育基本法の改定の是非こそを問いたい。

今や戦争を始めたアメリカでさえ、「イラク侵略は誤りだった」という認識が過半数を越え、イラクからの即時撤退が叫ばれている。シンディ・シーハンというイラクで息子を殺された一人の母親が夏休み休暇中のブッシュ大統領に面会を求めて一人でキャンプを張ったことがきっかけとなって、かつてない大きな反戦運動が立ち上がり、ブッシュ大統領の支持率は30%台へと急落した。

それに引き換えここ日本では、その間違った戦争に自衛隊を派遣してしまった責任を小泉首相に問いただす声すら聞こえてこない。マスコミは、一体何を見て(あるいは見ずに)、何を報道しているのか。

9月11日の選挙で与党に投票する人は、戦争にイエス、サマワの自衛隊員が被曝(サマワは劣化ウラン汚染がひどい地域)することにイエス、弱者切り捨てにイエス、国際資本に郵貯と簡保のお金を渡すことにイエス、と言っているのと同じことだ。マスコミの情報を鵜呑みにせずに、よくよく考えて投票しよう。

さて、郵政民営化がどうして行われるのか?その回答は、米国政府が日本政府に毎年要求を突きつけている「年次改革要望書」の中にある。日本の政治がどのように動いてきたか、小泉首相が何をしてきたかは、これを読めばほとんど理解できる。日本人のためではなく、アメリカ政府のために働く小泉首相は、日本の政治を私物化しているとしか言いようがない。

衆議院の解散のきっかけとなった郵政民営化について、マスコミの論調はほとんど本質に触れていない。郵便局のサービスが良くなるとか、悪くなるとかばかりで、一番大事なことが国民に伝わっていない。

郵政民営化が行われるのは、郵便貯金と簡易保険にある340兆円という莫大な資金を、民営化して国際金融市場に流すことが目的だ。現在のように財政投融資に使われて、金権土建政治を存続させるのももちろん問題があるから(この点については『どうして郵貯がいけないの』(北斗出版)をお読み下さい)、改革は必要だ。しかし小泉首相のやり方では、日本人がこつこつためた貯金や保険積立金を、アメリカの戦争を支えるために渡してしまうようなものだ。

日本が保有している米国債(正式には米財務省証券。Tボンド、Tビルとも呼ばれる)は、今年の2月で7020億ドルという莫大な金額だ。1ドル110円で計算すると、約77兆円という日本の国家予算にも匹敵する額の米国債を保有している。この資金の原資になっているのが、私たちの銀行貯金。国際資本が狙っているのは、郵貯と簡保に預けられた340兆円という莫大な資金だ。実は、全国通津浦々の高齢者たちが愛用している郵便貯金は日本最大の銀行なのだ。郵政民営化が実現したら、この莫大な資金が米国債に投資されてしまう。

私たちの翻訳した『戦争中毒』の中にも書かれているが、アメリカの2兆ドルを越える国家予算のうち、自由裁量予算の半分以上が軍事費に使われいてる(来年度の軍事予算は5千億ドルを越えた)。こうなると、米国債を買うという行為は、アメリカに戦争資金を提供をしていることと変わらない。

このあたりは田中優氏の『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方』(合同出版)に詳しいので、ぜひ参考にしてほしい。

だいたい、小泉首相は自分の通したい法案が否決されたからって、国会を解散していいのだろうか?選挙には莫大な金がかかり、それは私たちの税金で賄われているのだ(と書いているだけでも腹立たしくなってくる)。これでまた自民党が勝つようなことがあったら、この国の行く先は、米国と一緒に「でっちあげの」対テロ戦争を戦い、世界中から嫌われ、テロに怯え、福祉や教育はさらに切り捨てられ、子どもたちは希望をなくし、ますます荒廃していくだろう。

今回こそは、そうでない選択をしよう。まだ間に合う。小説『1000人になった人類』(白銀竜吉法師著、さんが出版。愛・地球博アースデイ第1回環境大賞受賞作品)の世界にならないように、この選挙で懸命な選択をしよう。

この新聞の読者がどんな人たちで、誰を応援しているのかは私にはわからないけれど、どうか選挙では現与党にだけはいれないように。投票したい人がいなくても、よりましな人を選んで、9月11日をより平和的な政権が誕生する日にしよう。

0 件のコメント: