2007/01/19

映画の街ロサンゼルスで A Single Woman

ロサンゼルスはハリウッドがある映画の街。今日は『戦争中毒』出版人のフランクさんのご縁で、パワフルな平和のメッセージを持った映画『A single Woman』を制作中の映画監督とその主演女優/原作者に会ってきました。日本語版を創りたい、ということで私たちに引き合わせてくれたのです。今日が初会合。

Jean Marie JPG

主演女優をしているジーンマリー・シンプソンさんは、この作品の元になった2人芝居『A Single Woman』の脚本家であり舞台女優です。この作品は、アメリカ初の女性下院議員になったジャネット・ランキンの生涯を描いた物語。第1次世界大戦と第2次世界大戦に反対し、そしてその後のあらゆる戦争への米国の参戦に反対し続けた彼女は、政府の圧力やバッシングを受けます。世間は彼女を批判し、彼女は孤立します。しかしそうした困難の中でも一生平和主義を貫き、独身のまま93歳の孤高の生涯を閉じます。

しかし、アメリカ初の女性下院議員でありながら、アメリカ人のほとんどが彼女の存在すら知りません。私自身も初めて彼女のことを知ったのは、インターネットで送られてきた『A Single Woman』の予告編を観たときです。「ジャネット・ランキン」で検索しましたら、日本語で出版されている『一票の反対 ジャネット・ランキンの生涯』という本を見つけました。さっそく読んでみよう。

こんな卓越した女性がいたのに、アメリカの歴史から抹殺されているのはなぜか?———ジーンマリーの調査が始まります。それは彼女の残したメッセージが今のアメリカの政策に真っ向から反するからだ、と納得します。彼女の演説はまるでガンジーやマーティン・ルーサーキングの魂が乗り移って話しているようです。いや、違う、軍産複合体が全てを支配するアメリカにおいて、そのことを堂々と批判し、戦争の根本原因を繰り返し主張している点において、それ以上の迫力があるかもしれません。

最近のデモでも良くみるスローガン「Make Love, Not War」もランキンの言葉。なんせ、第1次世界大戦にたった一人で反対したのですから、キング牧師よりずっと先駆者なのですよね。

それにしても、これだけ活躍したジャネット・ランキンの名前をどうして一度も聞いたことがないのでしょうね?私の場合は不勉強だからだと思いますが、ここアメリカでもほとんどの人が知らない。そのことが女優で脚本家のジーンマリーの心を掴んだのです。(ジーンマリーは女性差別と彼女の歯に衣を着せぬ言い方がマスコミに嫌われたためだと思っている。確かにランキンがもう少し辛辣じゃなければ、キャピトルヒルに銅像が建っていたことでしょう。そんなことは彼女自身は望まないでしょうが。)

「ジャネット・ランキンの存在を知らせたい」「今のアメリカにこそ、ランキンのメッセージが必要」と、ジーンマリーは歴史に埋もれていた資料を掘り起こし、2人芝居『A Single Woman』を創作。そしてジーンマリーの白熱の芝居を観て感動したカマラ・ロペスドーソンさんが、ジーンマリーと意気投合し、メガホンを握ることに。

Kamala JPG

この芝居は250回以上の上演を越えるロングランで、ついに今回の映画化となるわけですが、プロデューサー兼監督のカマラ・ロペスドーソンは、ご本人が女優でありながら映画監督もしており、多くの作品があります。2人とも美しく、才気あふれる女性たちでした。こういう女性たちと一緒に仕事ができるかもしれないのは、胸が躍ります。

今日は編集途中のクリップを見せてもらいましたが、ジャネット・ランキンがTVで右派のコメンテーターに揶揄され、攻撃されながら堂々と反論していく様子を観ているだけで、涙があふれてきてしまいました。彼女がどれだけ全ての戦争を防ぎたかったか、どれだけ戦死者を1人も生みたくなかったかが、溢れるように伝わってきて、私の一番奥にあるものと共振します。

人は生まれたら必ず死にます。だから殺してはいけない。殺させてもいけない。

しかし戦争(武力で脅すことを含む)が主な外交手段であるアメリカでは、平和主義者(パシフィスト)は叩かれ、バカにされる運命にあります。当時は今よりも酷い。まして政治家ならなおさら。

『A Single Woman』はこの夏完成予定。それまでに3万ドル(約360万円)の資金を集めなくちゃ、とカマラは言っていました。これから音の制作に入るのですが、それがとても高価なのだそう。音楽の著作権料は高いですからね。

完成したら、日本語版の制作にぜひ取り組んできたい作品の候補です。

そう、監督のカマラさんは『戦争中毒』の大ファンで、このアニメーション映画化にも取り組みたい、と言っています。両方(『A Single Woman』の日本語版制作と『戦争中毒』のアニメーション映画化)実現したらどんなに素晴らしいでしょう。実現させたい夢がまた増えてしまいました。

Group JPG

左からフランク、カマラ、私、ジーンマリー


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1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんばんは、いつも愛読しております。さっそく私も本を購入しました。映画も日本で公開されるのが楽しみです。どうぞお体を大切に!